講師 岡橋一嘉
KAZUYOSHI OKAHASHI 1980年生まれ。奈良県橿原市出身。
大学卒業後、吉野林業の清光林業(株)にて、道づくりのノウハウを学ぶ。14年勤務の後、2019年に独立しアルベロクオーレ株式会社を設立、代表。2019年10月より下北山村の森づくり、道づくりの人材育成現場の講師としてご指導いただいている。穏やかでかつ、丁寧な仕事ぶりが魅力な道づくりのプロフェッショナル。
下北山村の印象は?
明るい!一番最初にその印象があります。下北山村は山はきついけど、人が住んでいるところは、なるかったり、日当たりがいいイメージがありますね。
下北山村の山については? 踏査についてはどのようにおもいますか?
道づくりの視点で踏査をしているが、いざ入るとむずかしいところがありますね。でもやっていかなくてはならないね。
踏査については、むずかしい、時間がかかることですね。アカンところがあったらまた最初から振り出しに戻ることもある。踏査する人と粗道をつくる人が一緒ならばある程度変更が柔軟にできる。違うと踏査の時のニュアンスが伝わらないこともあって、むずかしいとおもいます。自分で踏査をして、自分で道をつくっていくのがいいのですが、おやっさん(岡橋清隆さん)からの話を聞くと、自分が踏査したところを別の人が粗道をつくって、後日行った時にあれっ全然違う、てことがあるらしく「ニュアンスを伝える難しさ」を感じるし、そこがとても怖いところだなと。下北山村だと、安井さんには、この細かいニュアンスは伝わっているとおもいます。臨機応変にすることを前提として。
道づくりの魅力って? 道づくりをしてきてよかったなとおもうことは?
設計図がないこと。自分の性格にあっているなっとおもいます。適当な面(笑)。あと、成果が目に見えるのは面白い。道をやっていたことで、いま、こうやって下北山村の道づくりの講師として縁ができて、仕事の幅も広がって、人との関係も広がっているというところは、よかったなあとおもいます。
自伐型林業についてはどうおもいますか?
その人その人の状況もあって、先行投資で道をつくることもあれば、道をつけて、木をだして、1回目から自伐といえども収益をあげたい人もいる。いろんなタイプがあるなあと。おのおののやり方でやっていくしかないですね。
2020年の森づくり研修では、前半、講師として、モバイルハウスは参加者として
どうでしたか?
なかなかこういった研修ができるところはないとおもいます。最初から、最後まで山から木をだして、ものづくりまで、一通りをやることはないので、すごいことだなあと思いますね。ものづくり、モバイルハウスでDIYをしたことも楽しくやらせてもらいました。好きなので。(笑)今後は、「つくるものの答えが決まっていること」のような発想で逆算で、山からものづくりまでやるのは面白いのではないかと。(この研修から派生したウッドデッキPRJみたいな)。みんなで考えて、木を出すということから、道づくりの後の間伐で木を出すやり方もあるんじゃないか。また、これまでやっていないことをやってみる研修も、ヘアピンや裏積みなど上級者編でやるのもいいかもしれません。
一嘉さんの中での森づくりの理想はありますか?
これまで道づくりをしてきて、理想というか清光林業の山で完成形のようなものを見ているので、理想の山を見ている、知っているのかなとは思います。
なので石丸さんの考えなどは新鮮ですね。広葉樹めちゃ好きなんだなあと(笑)たしかに、針葉樹の森はあまり音がしないので、広葉樹の森の近くで作業をしていたら、風が吹いてこずえの音が聞こえたりする時、なんかいい感じだなとおもったことはあります。だからといって針葉樹を伐って広葉樹を植える考えは自分にはなかったので、石丸さんは、面白いこというなーと、おもいます。
これからも道づくりは、やっていきたいですか?
はい。自分自身もこれで技術が完成しているとは思っていないし、まだまだうまくなるはずだと思っています。いまも改善していっているので。
自伐型林業の研修を受けて、単純に一人で黙々と山で仕事をすることに憧れ、この世界に飛び込んだ人がいるのですが、山での働きかた、独立してどうですか?
会社でサラリーマンとして林業をやっていましたが、独立してよかったなとおもいます。全部自分で決めることができる。やる、やらないのも自分の判断。サラリーマンとして林業をすることの限界を感じていて、例えば雨の日に施業をやるとか、9時ー5時という決まった時間で働くこととか、やれる時はやったらいいし、やったらアカン時はやらなくていいんじゃないかと思っていました。独立してからは、夏は明るい時間までやるとか、コロナ自粛になったときは、家族が家にいることも多かったので、土日関係なく、雨降ったら休み、土日でも晴れたら仕事をするなど、メリハリのあるやり方で、効率があがりました。
あと、自分のペースでできるのは魅力ですね。会社時代、人に合わせてやってきたからこそ、今のありがたみがわかる。これは、外でやっている仕事だからとか、林業に限った話ではなく、全ての仕事に当てはまるのではないかな。誰かの下で働く時代ではなくなってきているのかなとおもいます。吉野で、清光林業で、道の技術を学べたことはとても大きいです。いまこうして、独立しても生きていけているので。
講師としてどうですか?
最近は、若い人たちが奈良型作業道に魅力を感じて、道づくりを求めていることは貴重なことだと思います。自分が道づくりができることで、講師として、求められていて嬉しいなと思います。
この1年安井さん、谷内さんの現場での教育をしてきて、いかがでしたか?来年はどう期待していますか?
安井さんは、この一年独立に向けて着実に準備してる感じでしたね。佐田の第2支線を完成させた中でも、安井さんなりに色々と気付く事があったと思います。ヘアピンは2年間でやる機会が無かったので、4月から彼がやる新しい現場でのヘアピンの時はサポート出来たらな、と思います。
谷内くんは、安井さんと比べると成長の度合いがゆっくりですが、まぁこれが普通かなという感じもしています。平岩くん(↓ 大和森林管理協会の若手現場スタッフ)と間伐している時に怖い経験などもして、少しずつ危険予知能力を高めてくれればと思います。技術的にも上手くなって、自分で現場の段取りをたてられるようになってくれたらと思います。
協力隊に教える事で、気づくことはありますか?
教える事は難しいなと。細かく言った方が良いタイプと、放っておいても良いタイプがいるのかなぁと思ったりします。基本は、あんまり細かくは言いたくはないです。1人で山に行って作業してみて、トライアンドエラーで自分なりに頑張ってみる事っていうのは、成長する上で大切な工程かな、と思いますね。だから、研修も大事やけど本当に成長するのは研修じゃない時で、そのサポートが出来たらなぁと。あといろいろな地域の協力隊を見て思うのは、協力隊を通じてその村が見えるというか。村の支援(お金・現場の提供・林業に対する姿勢など)というのはすごく大事ですね。
一嘉さんの夢はなんですか?
夢はないなあ。夢があったら挫折感味わっていたかもしれないなあ。
数日後、夢あったわ!と伝えてくれたのは
「僕が教えた人たちが道づくりをしていくこと」 という言葉でした。
後記
できるだけ本人の意思に任せ、ここぞというときに指導する、じっと見守る姿が印象的です。一嘉さんの道づくりを見ていると、趣があり、木を大切に扱っていることが静かに伝わってきます。一嘉さんの会社名はアルベロクオーレ、イタリア語で木の心という意味。木の心を近くで感じながら、これからも飄々と楽しく、下北山村の道づくりは続きます。
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