安井洋文(協力隊OB 合同会社森のび代表)
HIROFUMI YASUI 1979年生まれ。大阪府大阪市出身。
大学では生物学を学び、就職で上京し3年間システムエンジニアとして勤務。自然のそばで働きたいと兵庫県朝来市の森林組合で14年働く。2019年自伐型林業を知り、吉野林業の近くで学びたいと吉野近郊の自伐型林業を実践する村を訪問視察。下北山村役場・北と出会い、森林整備の担い手の協力隊となる。現場でのさまざまな経験を活かし、道づくり、森林管理、森林管理ツールのGISも使いこなすオールマイティ。下北山村の森づくりを支えるリーダー的存在。2022年3月卒業。2022年4月、森と人をつなぐ「合同会社森のび」設立、代表。
林業に携わったきっかけは何ですか?
「もう少し 歳を重ねたら、いつかは田舎に住みたい」という気持ちが学生時代から何となく心の中にありましたが、卒業後は、東京で仕事をし、暮らしていました。
ある時、奈良の叔父に老後は田舎に住んでみたいなーと話をしたところ、「田舎暮らしは、歳をとってからは、大変やで。色んな不便な事も多いし、暮らしていくにも体力がいる。若いうちの方が楽しめるんちゃうか」と言われ、「その通りやな」と。(納得) そして、「今やな」と思いました(笑) まずは、田舎に住むには、仕事が必要。仕事探しをしていく中で、田舎で自然と関わる仕事として、林業を選びました。他の一次産業に比べて、サラリーマンとして働ける為、比較的、入りやすい世界に感じたのもあり、まずは一度やってみよう!という思いで、飛び込みました。
森林組合に入った頃は、まだ年配の方々が元気に仕事をされていて、若い世代に山の仕事のノウハウを引き継いでいく時期でした。彼らの働く姿を見て学びながら、いつも凄いな、格好いいな、と思って働いていました。
下北山村に来たきっかけは?
役場の林業担当北さん、林政アドバイザーの存在。憧れていた吉野林業のそばで学びたい気持ちがあり、吉野の道づくりの先生、岡橋清隆さん、岡橋一嘉さんに教えてもらえる環境がここにはあると思ったからです。
下北山村での生活はいかがですか?
コロナの影響もあり、村民さんとの交流はなかなかできていないですが、暮らしは慣れてきました。仕事を含めてやりたいことができています。
村で好きな場所は、どこですか?
池峰にある池神社ですね。はじめて明神池を見たときに、この場所はすごいなと感じました。ここが一番好きですね。
ある日の安井さんを教えてください
5時に起きて ご飯つくって 役場いって 山の現場へ お昼ご飯たべて ハンモックで昼寝して 鶏の声を聞いて 夕方までまた作業して 役場いって 帰って寝る!
外で仕事するのは気持ちいいです。
自伐型林業を知ったきっかけは?
自宅で怪我の療養中に、たまたまネット検索で知って、このビジネスモデルは面白いなと思い、より詳しく自分で調べてみました。
自伐型林業について、どのように感じていますか?
もともと森林組合に勤めていたのですが、森林組合の本来あるべき姿なのかなと思いました。山主さんの山をその地域の人が管理、施業していくというやり方としては同じで。産業として成り立っていない林業の現状では、自伐型林業はなんとか山主に応えていこうとしているのだと思います。
実際やってみて、道づくりの好きなところはありますか?
自分がやったことが分かりやすく、道が後世に残ること。自然との対話、水と土と風を考えながらやるのは、難しいけれど楽しいなとおもいます。昔の人がつくった里道、歩道など、しっかりと今でも、残っているのもいいなとおもいます。これからもやっていきたいです。
安井さんはどんな、森づくりをしたいですか?
人工林にかぎっては、植えた人の、育てた人の、関わった人の気持ちが感じられるので、自分が関わった山が、将来の人が見て「いいな、大切にしてたんだな」と、伝わるような山にしたいと思いますね。
2020年の研修はどうでしたか?(参加者の一人として)
山から木を伐ってきて、製材して、ものづくりまでを一貫して取り組んだのは、初めてだったので、この経験は大きいです。もっと山に携わる人は、基礎知識としてこういう経験をしたほうがいいのではないかと思いました。あまりに、林業は分業化されているので、いろんな分野のことをお互いに知らないままやっている人は多いとおもいます。今回の研修は、そういう意味でも、勉強するきっかけになりました。
最近、嬉しかったことはありましたか?
村の集落環境整備の仕事で、森林整備をしたときに、山主さんが嬉しそうだったのをみてこっちも嬉しくなりました。山主さんが喜んでくれて、「ありがとう」って言われるのは、やっぱり嬉しいです。(笑)
1年たって、印象に残った仕事は何ですか?
初めてのことばっかりだったので全部!でもその中でも、村に来て一番はじめにコモ谷で道づくりに必要な小丸太を準備するために間伐したことは面白かったです。これまでは、ずっと仕様書通りに、間伐率も決まっている状況での仕事ばかりしてきたので。村に来て、小丸太が必要という目的があり、間伐率や搬出方法を自分で考え決めてやるということを経験し、今からやっていくことは、こうゆうことなのかな、面白いだろうな、と思いました。
協力隊での働き方について感じていることは?
一人でやるとき、チームでやるときのバランスを自分で組み立てれるのは、いいなとおもいます。日々の働き方を、自分で決めれるのは、大きな魅力です。
チームで動くことについては?
全部をひとりでやるのは無理なので、チームで一緒にやれるのは心強いです。もちろん、足並みを揃えるのは難しいけれど、山の仕事は本当に多岐にわたるので、チームでなくてはできないだろうと思います。
長年携わっていて、林業って、体力的に厳しいものですか?
これまでやってきたような働き方だと歳を取ったら難しいと思っていましたが、自伐型林業のように作業道があると労働強度が全く異なり身体への負担が少ないので、歳を重ねてもユンボにのって作業ができるのでいいと思います。道があると、体力的に負担が少なくすみます。見回りするにしても、管理をするにしても、「道がある」と安全でいいと思いますね。
山主さんとコミュニケーションをとっていてどうですか?
以前は、ずっと現場だけで、山主さんと顔を合わせる機会は少なかったので、村では山主さんと直接話すことができ、顔が見れることは、いいですね。
卒業後、自立に向けて見えてきたことはありますか?
自伐型林業のビジネスモデルとプラスアルファで何をしたらいいのだろうと考えてきました。ここ最近、既存の林業補助金を利用して森林整備事業や、村の集落環境整備事業を個人で受託してやってみました。自分ができることは、これまで経験してきた山での仕事を活かして、自伐型林業と既存の森林整備のバランスをとればいいのかなとおもっています。
人に教えること、についてはどうおもっていますか?
言葉にすることは、難しいなとおもいます。でも、道づくりや伐倒はプロセスが明確なので、感覚的なことを数値化して論理的にわかりやすく伝えることができたらいいなとおもいます。
最近、任意団体森のびをつくったことで、変わったことはありますか?
この先が、具体化してきて、不安がとれました。組織をつくるイメージができていなかったんですけど、準備を体験できたことで、だいぶ見えてきましたね。つくってみたらどうってことないですが、それまでは不安でした。
安井さんの夢は何ですか?
これといった具体的なものは無いですが、自分ができることで、人に喜んでもらえることを一つ一つやっていきたいです。自分のためだけにやっていても楽しくはないですし、そういったことを積み重ねて、そのまま生涯を終えれたらいいかなと思います。
これからやってみたいことは何ですか?
林業×〇〇〇とよくいいますが、林業だけでも多岐にわたり大変な仕事です。こういった林業と何らかの副業というカタチは、特別なバックグラウンドや秀でた能力がない限り現実的には かなり難しいと個人的には感じています。長期的視点をもって、誠実に山に関わっていきたいと思う人たちが、山に関わる仕事だけで最低限、生業として成立するビジネスモデルを今後考えていきたいです。
後記
口数の少ない言葉の中にも、安井さんらしい言葉がキラッと光っていました。森と人と、関わる人が多い林業。難しいといわれる林業業界で長く働いてきたからでしょうか、長い目で物事を捉える視点はいつも学ぶことが多いです。
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