河野祐子(協力隊OB 合同会社森のび)
YUKO KAWANO 1971年生まれ。兵庫県神戸市出身。
デザイン会社に12年勤務後、独立。葉山に住みながら、下北山村主催の第3回自伐型林業研修に毎月参加し、山の素晴らしさに目覚める。このときの仲間と「任意団体下北山ライトクラブ」を設立。2019年4月より林業振興の協力隊となり、地域創生室との移住交流体験施設「むらんち 」のプロジェクト、自伐型林業研修、道づくりの研修など企画運営し、森と担い手と山主をつなぐ。2022年3月卒業。2022年4月、森と人をつなぐ「合同会社森のび」を安井とともに設立。
下北に来たきっかけは?
友人が下北山村の協力隊で移住し、村の様子を聞いていて、来村してみたところ、川がとても青くて美しく、村民さんが自給自足な暮らしを軸にしていところが気に入って、季節ごとに通っていました。夏に一週間ほど友人のゲストハウスに滞在した時、自伐型林業研修の参加募集チラシをみて、誰でもできるって言葉に惹かれ私もできると勝手におもい研修に毎月参加しました。このとき役場の北さんはじめ、研修生の仲間と出会って楽しくなり、森のことに携われたらいいなとおもい、林業振興というかたちで協力隊になることにしました。
森に携わろうとおもったきっかけは?
自伐型林業の研修に参加して、林業の問題、山の問題、など課題がとても多いことがわかりました。民間で生きてきたので、補助金がないと成立しないことは驚きでした。山には目には見えてないけど所有者ごとに境界がある、危険で尊敬されるべき仕事なのに守られていないとか、1つ1つとっても課題が多いからやってみたら面白いかも、やりがいがあるかもしれないと思ったからです。単純に山に入ると、いろんなアイデアも浮かび、自分自身が心地よく楽しいのもあります。森に関わる人間として、担い手の気持ちを知るためにも、1年目は岡橋一嘉さんから選木、伐倒、道づくりを丁寧に教えていただきました。
下北山村での暮らしはどうですか?
3年目になります。すでに数年前からいるみたいと言われるほど馴染んでいます。(笑)自分の住む池峰の地域の方々をはじめ、みなさんによく気にかけてもらっています。野菜をいただいたり、一緒にご飯を食べたり、集落ごとにお母さん、お父さんがいる感覚です。
ある日の1日
旋盤やって 製材所にいって相談したり WSのこと考えたり 山主さんに会って話したり 夕方メンバーとミーティングして情報をシェアしたり 仕事帰りに近所のおばあちゃんちによって 一緒にご飯 お風呂入って 寝る
出張で家に電気がつかない日が続くと、生きているかと近所のおばちゃん訪問あり(笑)
下北山村の好きなところは?
自分が住んでいる池峰集落にある明神池。よく行きます。時間によって水面の色が変わったり、空とのコントラストが美しい。森の研修を主催するときや、どこかに出張にいく時などは必ずお詣りにいき、帰ってきてからも行きますね。ほっとします。
自伐型林業についてはどうおもっていますか?
はじめての道づくりの研修で岡橋清隆さんに学んだとき、「山に安全な道をつくるんですが設計図がないんですよ」という言葉にハッとしました。事前に山に入って、踏査をして、路線を決めて、道をつくっていく。その時々で環境に配慮しながら臨機応変に判断して自分で決めて道をつくる。これは、森をデザインすることなのではと思いました。道があればこれから森と長く関わっていけるし、人も遊べる。いろんなことが可能になると思いました。今でもその気持ちは変わりません。
どんな森づくりをしたいですか?
その山それぞれに見合った手入れの仕方で森を育てて次の世代にバトンを渡したい。間伐率が決められているとか、補助金に縛られ、数字で縛られた整備ではなくて・・・森が生き生きとしていけるように、一番は森にとってどうしたらいいかを考えたい。暗かった林内が手入れをして適度に明るくなるとか、水や空気が循環して土がよくなって森がよくなったら、人がきても心地よい場になるのかなと。
森の魅力、価値についてどうおもっていますか?
森は、日々、水を生んでいること 生きている人間全てと関わっていること 森からの恩恵をたくさん日々受けているけれど、実は気づけていないことはたくさんあること。森について気づける瞬間を、いろんな場面でつくって伝えていきたいです。
最近嬉しかったこと
企画から主催・運営まで携わった9ヶ月にわたる2020年の森のプロジェクトの研修を無事安全に怪我なく終えられたこと。自分たちで伐った木をつかって、モバイルハウスまで作れたこと。林業に携わりたい人、山主さんなどさまざまな立場の方が参加してくれたことです。まずは要望の一番多かった、たこ焼き屋さんをしてみたい(笑)そして、集落にいって村民さんとのんびりとお茶したいです。
この一年で一番、印象に残った仕事は?
同じ仕事はないので全部!といいたい。あえていうなら、移住交流宿泊施設のプロジェクトに1年半近く関わってようやく昨年12月にできたことですかね。それまであたりまえではなかった、地域の山から地域の木材をつくり建物に使い都会の大学生たちとDIYで仕上げたのは、言葉にしたら簡単ですが、その裏にはたくさんの人の創意工夫と努力、そして強い想いがあったらかたちになったのと思うので、ほんまにできたんだなー奇跡だなーと思います。(笑)
協力隊での働き方はどうですか?
下北山村は、日給制なので、自分が働いたら働いた分だけの収入になります。土日に限らず体調をみて休みのペースを決めることもできます。スケジュールは週一回MTGをして情報を仲間とシェアして、自分だけの仕事、仲間とやる仕事、学ぶこと、バランスをみながら調整できるのがいいです。自立のための事業の準備などは、協力隊の時間以外で少しずつです。1年目は広く浅く 2年目はやることをいくつか選択 3年目は深く と思ってはいましたが、実際には、いつもいつも忙しくてくるくる回っている感じです。(笑)でも好きなことだからやれています。
チームで働くことについては?
仲間がいると安心です。山については一番初心者なので、仲間から学ぶことが多いです。山をどうしていくかの提案の時はいつもそれぞれの意見を話す、聞く、そして方針を決めるんですが、難しいけど面白いな、と思います。そして仲間と一緒に山に入って、話をするのは結構、大事な時間だと思っていて、内心感動してる時があります。(笑)
木工旋盤でのものづくりはどうですか?
昨年秋に習って、この春からはじめたのでまだまだ初心者です。自分の思った通りに作れるのは面白いなと思います。同じ形のものをたくさん作って欲しいと言われるのは苦手なので、自分なりの受注の仕方、作り方、売り方のスタイルを考えていきたいです。今後は、自伐型林業の道づくりで捨てられてしまう部分で商品をつくってみたい。何がいいかはこれからです。
任意団体森のびでの活動はどうですか?
森に携わっていくならば、ひとつの組織みたいなものは必要だと移住前から思ってきたので、つくったときは嬉しかったです。はじまったばかりですが、森は多くの人が携わらないとできないので、チームで仕事をするとき、個人プレーのときをうまく使って、下北山村の森、この奥大和の吉野の森が、一般の人から見ても動いているな、と思ってもらえるくらいに楽しんでもらえるようにしたいです。
河野さんの夢はなんですか?
問題を抱えた山主さんの想いを聞いて1つでも多くの森を整備できる環境につなげていく。下北山村の森を今より少しでもいい状態で次世代につなぐこと、ただそれだけです。生きているうちにやれることはほんの少し。美しい川、美味しい水、新鮮な空気、山から湧き上がる霧、、、下北のこの風景がいつまでも変わらないでいれるように今なにができるんかなーっていつも思いながら、森のそばでなにかしらずっとこまごまと動いていたいです。
これからやってみたいことは?
もっと幼いこどもたちと一緒に森に入って遊びたい!森から人が離れてしまったから一緒に森に入り人間力を養ってもらいたい。でも、今のまんまだと、森に入りにくいからそのハードルを下げる作業道をもっと活かして、森を持っている人、森を育てる人、森を楽しむ人をつないでみんなで森を大事に楽しむ仕組みをつくる。楽しみながら、長く森に通う仕組みをつくって、さらにものづくりの面白さを知ってもらえるようにするです!
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