協力隊 長柄久光
HISAMITSU NAGARA 1967年生まれ。静岡県熱海市出身。中学を卒業後すぐに航空自衛隊に入る。自衛隊時代は主に通信及び隊員教育関連の業務についていた。自衛隊の定年55歳を2022年7月に迎え、その後の人生を考えて前々から興味のあった林業の世界に飛び込む。2022年9月から下北山村の地域おこし協力隊として活動開始。
2022年9月から村に来て、約半年経ちますがいかがですか?
だいぶ突っ走りました!林業1本で漬け込んできた感じです。イメージしていたよりも、はるかに上をいく上出来の環境、そして上出来の選択。いろいろな不安がある中、「55歳から林業をやるのは良くないよ」と言われながらも、ここに来ました。周りの人はいい人だし、仕事に負のプレッシャーを感じずにできています。この半年、大きなストレスがかかることなく、林業の導入としてはよかったなあと思います。
林業をやりたいと思ったきっかけは?
30代の時に愛知県の三河高原で森の中を走るオリエンテーリング*競技をやっていたんですが、だいぶハマっていました。年代別だけど県の代表選手を目指そうというくらい(笑)道のないところを地図を見ながら、間伐・整備された森の中を気持ちよく走ります。競技者は、森林を整備してくれる林業の方を尊敬しています。すでに私は社会人だったので、その時は林業に就くイメージはなかったのですが、定年後は林業をやってみたいなと思いました。それがきっかけです。本当にそうなるとは思ってなかったけれど(笑)定年に近づくにあたって、これから何しようかと考えて、森の中はいいな、林業はいいなと思っていました。
*オリエンテーリングとは、地図とコンパスを用いて山野に設置されたポイントを通過して、スタートからフィニッシュまでの所要時間を競うスポーツです。
下北山村にたどり着いた、感じですか?
最初から、自伐型林業、下北山村、地域おこし協力隊、、、というのは就職活動の全体の95%まで出てこなかった選択なんです。東京で林業就業のための就職活動をしましたが、55歳という年齢で断られました。一部の採用してもらえそうなところがあり、面接もありました。その中の1つに「地域おこし協力隊」というキーワードが出てきて、さらに調べると「自伐型林業」という言葉が出てきました。自伐型林業をWEBで調べてみたら、もしかすると、パソコンのスキルが必要だとか、山主さんへの提案する資料を作るとか、道づくりが林業とつながっているとは最初思わなかったり、ユンボも操作できなくちゃいけないなど、いろんなことができるのを知りました。木を伐るだけではない、自伐型林業にとても魅力に感じました。どこかで自伐型林業の入口がないかと探したところ、下北山村がありました。下北山村だけが「来てもいいですよ!」と言われました。
岡橋一嘉さんの研修に参加して、いかがですか?
私は大好きです!大好きですが先にきますね(笑)私も自衛隊時代に教官を6年して、生活指導もしていましたが、心まで掴める指導は難しいです。人の心に響かせるには、人格だったり、わたくしのためでなく、人のためにという気持ちでないといけません。一嘉さんは、すごいと思います。率先してこれを教えるというやり方ではなく、さまざまな技を披露しながら、危ないことをした時は止めて、なぜだめなのか、過去こういうこともあったなど理由も話してくれます。私が年齢が高いから教えにくいと思いますが、尊敬できる方だと思います。
先生先生していないけどポイントははずさない。毎回、研修内容を協力隊内で共有するために、Slackにまとめていて、一嘉先生に何度も同じことを言われたことは、再指導と記録することが多いのですが(笑)こないだも言ったよねと言われることはありません。下北山村の教育環境は恵まれているなあと思います。
協力隊、仲間についてはどう思っていますか?
石丸さんは、森林管理、林業に関する知識が豊富で、学ぶことがたくさんあります。これから自立に向けて頑張っていただきたいと思います。
道づくりについては、谷内さんにはかないません。ユンボ操作が上手で、道づくりは性格が出ますね。谷内さんは丁寧。時間がかかっても、それが谷内さんらしいと思います。
協力隊3人でいるときに議論になることもあります。(笑)3人の時間を使って決めたことは、しっかりとやっていきたいと思います。だからぶつかることもありますね。協力隊は、人が入れ替わっていくのでそのメンバーごとに視野が変わり、楽しいと思いますね。内輪だけの幸せじゃなく、協力隊は第3者から見られるので、一般常識や慣習と照らし合わせながらやっていきたいと思います。
下北山村での暮らしはどうですか?
まだそんなに実は広がっていないです。前鬼での石積みのワークショップや不動峠のイベントに参加して、交流しています。名前を覚えてもらって声をかけていただくこともあり、嬉しいです。積み上げが必要ですね。これからです。
前鬼での石積みワークショップに3日間参加
下北山村で好きな場所はありますか?
森の中は好きです。そんな中で1つ挙げるとしたら、前鬼ですね。神ががかっていている雰囲気。先日、小仲坊に泊まってきました。五鬼助さんと一緒に食事をして、人生についてありがたくご教示いただきました。今後もずっと関わっていたいと思います。下北山村の中に前鬼があるというのは、価値があると思います。栃の木のエリア、大峰奥駈道が前鬼に下りてきて繋がっているという修験道。修験者になりたいと思った時もありますが(笑)
長柄さんの得意なことはどんなことですか?
何屋さんですか?と言われたら、組織屋ですと答えます。人間のグループで活動するのが好きですね。自分が前に出てというよりも、みんなにやってもらうというのをずっとやってきたので、グループ活動が好きで、何かやりたいです。トップよりも、セカンド、サードあたりでいるポジションが得意ですかね。
最近、嬉しかったことは?
日々できないことができるようになることです。あんなに森で込み入ったところに、木を倒したり、ユンボを使って道に土を押し込みするなど、18、19歳の頃のできないことができるようになった頃を思い出します。あの頃は、自分が年下だった時に年上の部下がいましたが、今は年下の人が出来て、年上の自分が出来ない状況。でも、少しずつできるようになっているのが日々楽しい!楽しくてしょうがないです。ユンボが乗れるようになってきたし、チェーンソーで次に何をするか、わかるようになってきたのは楽しいです。楽しい大事(笑)
長柄さんが大切にしている、大事にしていることは?
笑い ですね。(笑)どんなに悲壮な時も、笑っていたらなんとかなると思います。笑いは大切かな。そこを忘れたら、誰かに指摘してほしいです。
長柄さんのある日の1日を教えてください。
朝起きる、天気を調べる、ご飯を食べる、仕事をする、ご飯を食べる、お風呂に入る、寝る。このリズムが安定してきました。最初は、前職の影響から20時や21時に寝るのが罪悪感があったんですが、最近そういうのはなくて、自然と疲れてそのまま寝るようになりました。
新しい現場(池峰での現場)で仕事をしていて、いかがですか?
初めての道つけの現場でもあるので、新鮮で、引き締まります。失敗できないと思いますね。山主さんから任されたところでもあるので、トレーニングをさせていただきながら、実務として進めているので。
将来につながるように、これからどのようにしていきたいですか?
打倒、「合同会社森のび」です(笑)森のびさんは、凄まじいパワーですね。今日の森のびさんの池峰地区でのお披露目会をみて、何クソって思いました(笑)できれば森のびさんに対抗する、よきライバル、独立してお互いにいい影響し合えるそういう会社が3、4つここで生まれたら村が強くなると思います。自分は、あと15年くらい、与えられた時間はあまりないので、まいてやらなくちゃいけないと思っています。組織、グループにしていきたいと思いますね。もっと、同じ思いを持つ人たちが村に来てくれたら。北さんが尽力しているので、グループで、全体で幸せになるようになればいいなと思います。
長柄さんの夢は何ですか?
下北山村にしっかりと根を下ろして、豊かな村民ライフを過ごすこと。楽しみいっぱいの下北山村です。航空自衛隊39年間の経験は、定年退職したらゼロになっちゃうのではなく、様々なことを引き継いでこの村での新しい生活で活きています。そのうえで、新しい仕事の林業では、私のいいところを最大に発揮して、受け入れてくれた下北山村にたくさん恩返しができるといいなって思ってます。まずは林業で生計が立てられること、そして獣害駆除、消防団への参加、遭難対策への協力など、いろいろ貢献できればいいなって思います。あと林業では特殊伐採にも挑戦してみたいです。あれやこれやとやりたいことは枚挙にいとまがないですが、総倒れにならないよう一つ一つ地に足をつけて、着実にこなして、そして巨星「森のび」さんに肩を並べられる、かっこいい会社をこの村で作ってみたいです。
後記
長柄さんの行動から、やりたいことを始めるのに年齢がハードルになってはいけない、人がどうこう言おうが決断するのは自分だと、気づかされます。これから思いっきり林業を通じてここで自分の思う人生を歩んで楽しんでいただきたい。いろいろな経験と年齢の方がいて、お互いに切磋琢磨できるのが協力隊の強み。これからよろしくお願いしますー
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